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between anthropology, primatology and management of technology

書評: 技術経営論

「技術経営(Management of Technology)」を大学院での専門にしたいと思い続けていた一方、自分の中で「技術経営」という言葉の定義が非常に曖昧だったので、丹羽清の「技術経営論」を読みながら自分が何をしたいのかを再考する事にした。本書における技術経営の定義は「技術を効率的に活用して経営を行うこと」であり、具体的に下記7つの領域で技術経営を捉えている。

  1. 技術戦略
  2. 技術マーケティング
  3. イノベーション
  4. 研究開発
  5. 技術組織
  6. 技術リスクマネジメント
  7. 知識マネジメント

全ての項目を丁寧に読んだわけではないが、技術経営に限らない経営学・マーケティング論の話を織り込みながら、かなり網羅的に「技術経営」という分野がまとめられていると感じた。また、著者自身が日立出身ということもあり、実践を意識した形で各テーマが語られているのも良い(ただし事例はほぼ書かれていないため、製造業の現場に触れた事のない人には、少しイメージがわきづらいかもしれない)。


 

さて、私は「技術と社会を繋ぐ」という漠然とした目標の下、官僚やらメーカーやらと悩みながらコンサルタントという職業を選び、「技術経営論」のテーマでもある技術戦略の構築に従事している人間である。「技術経営」というキーワードに憧れ、実務経験を積んでいつかは学位をと考えていたが、本書を読んで「学問としての技術経営にはあまり興味がない」ことに気が付いてしまった。

学問としての技術経営は、各社の事例を基に帰納的に成り立っている。そのため、技術経営を学んでも、経営が上手く行ったり、画期的なイノベーションが生み出せるわけではない(技術経営自体もそれを前提としているわけではないと思う)。一方、私の興味はあくまで"実践的な"技術経営にあるため、もしかしたら大学院よりも今の仕事を続けた方が、自分の目標には即しているのかもしれない。

体系的に技術経営を学ぶ意味についてはまだ考えている途中だが、どちらにせよもう少し狭い分野(技術の価値評価や組織論など)に焦点を当てた方が良いのかも、と思わせてくれた一冊であった(そして大学院選びも白紙に戻るのであった…)。

技術経営論

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