What drives me.

between anthropology, primatology and management of technology

模倣と想像

本当は人間と機械の違いについて書こうと思っていたけれど、先日たまたま参加した松沢さんの講演が素晴らしかったので、メモを兼ねてここに書いておく。

松沢さんは京都大学の霊長研に在籍する研究者だ。「アイ・プロジェクト」というチンパンジーに言葉を教える研究で一躍有名になった方で(勿論他にも多々素晴らしい功績は残されている)、霊長類研究の第一人者である。

先日の講演では、人間と他のヒト科を隔てるものは何か、というお話をされていた。ちなみにヒト科には、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンが含まれている。氏は人間の特徴として、おばあさん、あおむけ、教育、言語というキーワードを挙げている。おばあさんとあおむけに関する話はここではちょっと割愛するとして、教育と言語について感じたことを。

チンパンジーの教育というのは「見て覚えろ」というものらしく、子供は親の仕草を真似して色々な事を覚えていく。この「真似る」という行為は一見簡単に見えるけれど、実はとても難しいことである。出展を忘れてしまったので詳しい話ができないけれど、心の理論とかそういう話に繋がってくる(心の理論の話は後日あらためて)。模倣学習についての歴史はこちらを見て欲しい。言語についても、チンパンジーはきちんと自分たちの「ことば」を持っている。人間の手話や漢字だって覚えることができる。

このように、チンパンジーは他者や人間を見ながら様々な行為を学習できる。だけど、空白を埋める、すなわち「想像する」という行為ができない。例えば、輪郭だけが書かれている絵を見せられた時、人間の子供は顔を補間できるけれど、チンパンジーは輪郭をなぞるだけだそうだ。松沢さんは、「チンパンジーは目の前のことしか理解できないけれど、人間は今よりもずっと先のことを想像できる」とおっしゃっていた。

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心